その発言に誰もが驚く中で、私は笑顔を絶やさなかった。いつも通りの私で、いつも通りのただの友達として魁に言った。



「あ、ありがとう……」



少し照れくさそうにしている魁の背中をバシバシと叩いて、私は“じゃあね”と告げると1人先を急ぐ。


そして私の足は、入るべきはずの教室の扉をすんなりと通り過ぎた。



続々と各教室に入っていく生徒達の間を通り抜けて、誰もいない廊下に腰を下ろす。



「……っは、はは……っ」



何がおかしい?

どうしてこんなに笑みがこぼれるんだろう。


頭の中に焼き付いて離れない。


幸せそうで、楽しそうで、そして2人の間には……



しっかりと重なり合った手。






わかってた。確かにわかってた。


いつかはこの時が来ると。


わかっていたから、悲しくない。辛くない。


笑顔で受け入れられる。祝福できる。



魁にもちゃんと伝えたんだから。


だから、絶対に泣かない










「……っ、う……っ」





泣くはずが、ないんだ――



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