「桜綾ちゃん?何してんの?」



「な、何でもない‼」



見られてしまった。魁に。


目が合ったのが例え一瞬でも、その間はとても気まずい。



タイミング悪い……尊琉君が私の名前を呼ばなかったらバレてなかったかな……



私は尊琉君に誤解されないように、笑ってまた彼の隣に戻った。


ほんの少しだけ、前後の距離を置いて。



どうせ教室でも尊琉君と話している所は見られてるんだから今更と言えば今更。


だけど2人だけでいる所を魁に見られるのは抵抗があった。



とりあえず、尊琉君が怪しんでなくてよかった……






私は尊琉君と別れた後、教室には戻らずにそのままトイレへ向かった。


教室だと魁が来るかもしれないし……

誰もいないし丁度いいからちょっとここで休んでよ……



そう思っていた時。





「あ~あ。素直に謝っておけばよかったのに」



声のした方を見ると、明菜がドアの所に腕を組んで立っていた。


明らかな“裏の顔”で。



「あの2人にあんなこと言っちゃってよかったのー?相当怒ってたよ?2人共」



嘲笑うように口に手を当ててクスクスと笑う明菜。



「元はと言えばあんたが変な噂流したからでしょ、一体何がしたいのよ」


「さぁねー」



不適な笑みを浮かべて惚ける明菜に、私は冷静を保つのに必死だった。




「桜綾みたいな子初めてなんだよねー。今まで私のやり方は全部上手くいってたのに、昨日は尊琉って人に恥かかされたしね、あんたのせいで。こんなに邪魔するやつは本当に初めて」