「よっ」


廊下を1人で歩いている所を呼び止められた。



「あ、尊琉君。ビックリした」


「いい加減慣れろよなー。何回目だと思ってんだよ」


「あはは、ゴメンゴメン」



笑ってごまかしてるけど、何回されても慣れない。


どうしても、魁と重なってしまうから。




「最近よく来るね」


「……嫌?」


「違うの、全然そういう意味じゃなくて……‼」



寂しそうな顔をする尊琉君に私は一生懸命否定する。


本当にそんなつもりないのに。



「そっか、ならよかったっ‼」



明るい笑顔に変わる尊琉君を見て、私は何も言えなかった。


私の隣を歩く尊琉君に対して、どこか違和感を覚えてしまう。



丁度その時、見覚えのある姿が視界に入った。



――……魁。



段々と縮まる距離。魁はまだ私には気付いてない。

隣には尊琉君。



私は無意識にその場に立ち止まっていた。


本当に無意識だった。魁を見た瞬間頭が真っ白になって何も考えられなくて。



ただ誤解されたくないって気持ちがあって、私の体は勝手に尊琉君と距離を置いて、顔がわからないように下を向いたまま廊下の端に止まっていた。



そして、魁がもうすぐ通り過ぎるという位置にまできた時……



「桜綾ちゃん?」


「っ‼」



立ち止まった私に気付き、尊琉君が振り返って私の名前を呼んだ。


無視する訳にもいかず、顔を上げると――……




「…………」



こちらを見ていた魁と、目が合ってしまった。