「せいぜい尊琉君にも嫌われないように頑張りなよ」
クスクスと笑いながら明菜は立ち去ろうとする。
私の怒りを募るだけ募らせておいて。
「尊琉君はそんな人じゃない」
「さぁ?人は見かけによらないからねぇ。私と桜綾とどっちを信じるのかなぁ?」
「そんなの……」
“私に決まってる”
そんなこと、言えるはずがない。
何を根拠に?
真実でも最低なことを言って罵った私より、涙を流す可愛らしい明菜の方がよっぽど説得力がある。
「無駄な抵抗とか、しない方がいいんじゃない?余計自分を苦しめるだけよ?」
何も言えない。結局はか弱い人間の方が勝ち。
明菜は上手く自分を使い分けてる。
あの絶対的な自信はきっとそこから出ているんだろう。
……あいつ、顔を見るだけで日に日に苛立つ。
何も言い返せない自分には、余計に。
長ったらしい時間を耐えて、授業を終えたと同時に私はすぐに音楽室から出た。
どうしようもなくて、さっきの明菜の言葉だけが頭の中で何度もリピートされて、嫌になって歩くスピードが早くなる。
教科書と筆箱をしっかりと握り締め、ずっと下を向いたまま教室に向かっていた。
前も見ていなかったし、誰の声も耳に入ってこない。
1つの言葉で頭がいっぱいで、何も考えてなかったんだ。
長い廊下を曲がろうとした時、丁度暗くなった視界。
「きゃっ……‼」



