特に用事もないし、何となく魁と明菜の声が聞こえてくるのが嫌だったから。
女子トイレには数人、鏡の前で楽しそうに喋っていたが私を見るなり沈黙になった。
「……行こ」
みるみるうちに険しい表情になり、1人がそう言うと次々と足早にトイレから出て行く。
何あれ、しかも全く喋ったことない人たちばっかり。
なんであんな態度取られなきゃいけないの?って思ったけど、すぐにピンときた。
きっと明菜と仲がいい子だろうな
そう納得して、私は壁に寄りかかった。
こんなことになるんだったら、明菜にあんなこと言わなきゃよかったのかな……
そしたらみんなに睨まれずにすんだのに。
それが一番無難だったかもしれないが、明菜の態度を思い出すとやはりこれでよかったのだと思う。
「早く卒業したいな……」
ポツリと口から零れた本音。
卒業して、明菜と離れたい。
「……どっか行こ」
スマホで時間を確認すると、まだあと数分余っている。
ギリギリでも十分間に合うと思い、私は少し歩くことにした。
1階にある3年の廊下からはいろんな場所が近い。
外にもすぐに出れるし、図書室も保健室も職員室もそんなに遠くなかった。
目に留まったのは図書室。
まだ改装して間もないこの場所は、冷暖房完備でとても暖かい。
「あれ……?」
椅子に何人か男子生徒が座っていて、その中の1人が私に気付いた。
「あ」
意外なことに、それは尊琉君だった。



