*彩葉side*


桜綾が飛び出していった後、私たちは桜綾を追いかけられずにいた。


それよりも、この人だかりを何とかしなければ。


これでは余計悪い噂になって学校中に広まってしまう。




何が原因でこうなった?


何が原因で桜綾は飛び出して行った?



その答えを……私はちゃんとわかっている。



ぐっと拳に力を入れて唇を噛み締めた後、私は真っ直ぐに1人の男へ向かって歩み出した。







「ふざけんじゃねーよ」




こんなに怒りに満ちた私を見るのは、幼い頃からずっと一緒だった魁ですら初めてだろう。




「桜綾がいろんな男と遊んでる?彼氏取ったりしてる?
……それを、あんたはその目で見たの?ちゃんと自分の目で見たことあんのかよ!?」



魁にそう叫ぶと、私は呆れた笑みを浮かべた。



「何が“最低”よ、“見損なった”よ。あんたの方がよっぽど最低じゃない‼
桜綾がそんなことするような子じゃないって、あんただってわかってるだろ!?」



魁の胸倉を掴み、思い切り力をこめて壁に押し付けた。