黙っている私の異変に気付いたのか、魁が私の顔を覗き込もうとした。


「ゴメン。私帰る」



俯いたまま、私は鞄を持って教室から出た。

一度も魁に振り返らないまま。



後ろからの魁の声にも、一切反応しなかった。


あと少しで、気付かれる所だったから。

私が泣いてることに……




離れたくてさっきの言葉を忘れたくて、私はただ走って家までずっと走りつづけた。


涙なんてどうでもいい。魁に気付かれないなら、誰に知られてもいい。



聞きたくなかった、そんな言葉。


私自身を、魁に否定されたような気がした。




「バカ……何であんなこと言ったの?私……」



嘘かもしれない。

でも……冗談でも、聞きたくなかった。



それに、もし本気だったら?


あれが魁の本音なら?



ほんの僅かな可能性にかけてた。

もしかしたらまだ間に合うかもって、魁の気持ちを変えられるかもって、期待してた。



それがあったから、諦めないで頑張ろうって思えたのに……




魁……迷惑ですか?


毎日言い合いをする私たちが、本当は嫌いですか?



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