「バカ……私」
こんな些細なことで嬉しく感じちゃダメなのに。
なんの意味もこめられてなくて当たり前なんだから。
本当に……バカじゃん。
そんな気持ちを頭から消すように、私は一生懸命教室を箒で掃く。
床ばかりを一生懸命見ていたので、後ろの気配に気付かなかった。
急に動かなくなった箒。
不思議に思い顔を上げると、彼が呆れ顔で箒を掴んでいた。
「アホ。手伝うって言ってんだから素直にされとけ」
魁は私から無理矢理箒を奪うと、無言で掃き始めた。
どうして……
聞くにも聞けず、私はお礼を言うともう1本箒を持ってきた。
「…………」
どちらも口を開かない。無言が続く。
気まずい……何か喋らなきゃ。
だけどこんな時に何話したらいいんだろう……。
「なぁ、片桐」
「え?」
悩んでいたら、魁から話しかけてきた。
微妙な距離が、徐々に縮まっていく。
魁は、箒で掃きながら言った。
「お前のさ……好きな人って、どんな奴?」



