「バカッ!」


バタン!
勢いよくドアを閉めた。


どこへ行こう…
迷った末、この時間にどこかへ行くのも
何だか怖いし、
玄関のドアの前で座っていることにした。


はぁ…。
何度目のケンカだろう。
私と祐也は1年ぐらい前に付き合い始めた。
最近はよくお互いの家へ
泊まりに行くようになった。
泊まるようになって
だんだんケンカもふえていった。
内容はというと…
ホントにたわいもない理由。
今も男女間に恋愛感情なしに
友情はあるのか?という理由で
ケンカになってしまったのだ。


っていうか!
探しに来てくれてもいいんじゃないのー!
居るのがバレないよう、
音を立てずに怒る。
もう、いい、帰ろっかな
なんて考えていたら。

キィ。
ドアの開いた音でもないから
びっくりして後ろを振り向いた。
…え?そこかよ!
郵便受けがペコペコと
開いていた。

「ごめんね?りりちゃん。
そこにいるんでしょ?
戻ってきてよ。」

甘い声と口調で言われると
もうどうにもならない。
いつもなら
りり!
って呼ぶくせに。こういう時だけ
ちゃん付けするんだから。


「…なんでここにいるってわかったの?」

素直に部屋には戻らない。
ちょっとくらい意地を
見せたっていいでしょう?

「ケンカした時はいつも
そこにいるでしょ?
夜に街をひとりで歩くの
怖いからって。」


…ずるい。
なんでそんなこと知っているのよ。
戻りたくなるでしょおが。

「…お願い。戻ってきて」

もうダメ。
今度はすんなりと部屋の中へ
戻っていった。



「りりちゃんっ
ごめんね?」


身長高いくせに上目遣いは
やめてよ。
そんな可愛い顔見せないでよ。


私はまだうつむいたまま。

「なんで男女間に友情はないって
いうの?だったら祐也と
彩智はどうなるの?友達じゃ
なかったら何?」


みっともない。
彩智というのは私の親友で
祐也と付き合ってすぐ紹介した。
2人も偶然仲良くなって
どこかへ出かける時は
割と3人が多い。
私、親友にまで嫉妬してる。最低だ。

突然ぎゅうっと抱きしめられた。

「っえ?」

あまりにも突然で変な声が出る。


「…りり、可愛すぎ。
嫉妬してくれるくらい
俺のこと好きなんでしょ?嬉しすぎるよ。
俺、人気者のりりだから
心配なんだよ。男ってすぐ図に乗るから。
…俺みたいに。」


ふふっ。
思わず笑ってしまった。
ケンカの時でも笑えるフレーズを
出してくるのがこの男。
いいんだか悪いんだかわからないけど
私は好き。


「私だってね、祐也のこと誰にも
渡したくないから怒ったの。
大丈夫だよ、私、
祐也のことしか見てない。」
ぎゅうっと抱きしめ返した。
こんなにも愛しているのに
嘘をつく理由なんてない。


「りり、愛してる。
これからもケンカ沢山するだろうけど
ずっと隣にいて」


ぶわぁっと涙があふれる。
こんなセリフ、言われて嬉しく
ないわけない。


「私もだよっ、祐也を愛してる。」


キス魔が上から降ってくる。
トロン、トロンと
キスでとろけてゆく。


「…やばい。今日する気なかったんだけど
していい?」


なんてやつだ。
こんな可愛い顔をされて
NOと言えるわけない。


「いいよ、沢山して。」



今日も2人、溶けてゆく。


Fin.