昼休み後の5時限目の授業で机につっぷしながら、左隣の席に座る篠原のことを考えていた。進級してから何ヶ月か経ってもう秋の終わりにさしかかるところだ。篠原も、前はクラスの男子と和気あいあいとじゃれあっていたはずだ。いつからだろう、彼がこんなことになってしまったのは。なにかしでかしたのか、あいつらが気に食わないことようなことを。
「芦田、起きろ。試験前なのにそんな態度でいいのか、おまえ」
少し顔をあげて先生を見ると、なんだその目は、と言われた。いや、ずっと眼をつむっていたから突然入ってきた光がまぶしかっただけなんだけれど。決して睨んだわけではなく。
「いま俺が話した重要なところ、言ってみろ」
「19世紀の代表的な芸術家や作家が選択問題で出題されるかもしれないから識別できるようにしておく、ドラクロワ、ベートーヴェン、スタンダールなど。」
わたしが寝ていたので答えられないと踏んでいた先生は、わたしの完璧な答えに不服そうな顔をした。寝ているように見えて実は話は意外とちゃんと聴いてたりする。こともある。
「次寝ていたら減点するからな」
「わかったよ」
「先生に対して敬語も使えないのか」
本当にめんどくさい、この担任。
質問に答えず視線を外すと、佳菜美がこちらを振り返ってニヤニヤ笑っている。それに少し口角を上げて笑い返す。
「芦田 凛子は引き続き、減点対象者だな」
なんなのこの人。田代 晃平なんて、あんたのすぐ目の前で居眠りを扱いているというのに。こわくて注意できないんでしょ、情けない。人を選んで注意するダメ教師。
「べつにいいよー」
軽くあしらったふりをして、また机に突っ伏した。くすくすと微かな笑い声が教室に響く。
「凛子マジおもしろいわ」
わたしはクラスではこういうキャラだ。だから、これでいいのだ。
クラスでは、不良だと思われている。イコール、こわいと思われている。
わたしたちのグループはいわゆるこのクラスの頂点で、ひたすらギャーギャー騒いで、自分たちがイケていると思っている。みんなも少なからず、わたしたちのことをそう思っている節はあるのだろう。少しでもわたしたちに気に入られたいと思っているのが見え見えで、だからこのクラスでわたしたちに逆らえる奴はいない。クラスではわたしたちがルールで、法律だ。
わかっている、くだらないと。そして、わかっているからこそ、差し詰め楽ではない。たのしくはない。こころに虚しく浮かぶ優越感に、少しの間だけ浸ることができる。それだけ。
「芦田、起きろ。試験前なのにそんな態度でいいのか、おまえ」
少し顔をあげて先生を見ると、なんだその目は、と言われた。いや、ずっと眼をつむっていたから突然入ってきた光がまぶしかっただけなんだけれど。決して睨んだわけではなく。
「いま俺が話した重要なところ、言ってみろ」
「19世紀の代表的な芸術家や作家が選択問題で出題されるかもしれないから識別できるようにしておく、ドラクロワ、ベートーヴェン、スタンダールなど。」
わたしが寝ていたので答えられないと踏んでいた先生は、わたしの完璧な答えに不服そうな顔をした。寝ているように見えて実は話は意外とちゃんと聴いてたりする。こともある。
「次寝ていたら減点するからな」
「わかったよ」
「先生に対して敬語も使えないのか」
本当にめんどくさい、この担任。
質問に答えず視線を外すと、佳菜美がこちらを振り返ってニヤニヤ笑っている。それに少し口角を上げて笑い返す。
「芦田 凛子は引き続き、減点対象者だな」
なんなのこの人。田代 晃平なんて、あんたのすぐ目の前で居眠りを扱いているというのに。こわくて注意できないんでしょ、情けない。人を選んで注意するダメ教師。
「べつにいいよー」
軽くあしらったふりをして、また机に突っ伏した。くすくすと微かな笑い声が教室に響く。
「凛子マジおもしろいわ」
わたしはクラスではこういうキャラだ。だから、これでいいのだ。
クラスでは、不良だと思われている。イコール、こわいと思われている。
わたしたちのグループはいわゆるこのクラスの頂点で、ひたすらギャーギャー騒いで、自分たちがイケていると思っている。みんなも少なからず、わたしたちのことをそう思っている節はあるのだろう。少しでもわたしたちに気に入られたいと思っているのが見え見えで、だからこのクラスでわたしたちに逆らえる奴はいない。クラスではわたしたちがルールで、法律だ。
わかっている、くだらないと。そして、わかっているからこそ、差し詰め楽ではない。たのしくはない。こころに虚しく浮かぶ優越感に、少しの間だけ浸ることができる。それだけ。
