あれ…なんか予想と全然違う…
「あ……ぜんぜん!気にしないでください」
私がブンブン手を横に振ると、彼は少し考えてからポケットをゴソゴソ漁って何かを取り出した。
「これ、やる」
「え?」
いきなり手渡されたものに目を丸くする。
こ、これはコーヒー味のチュッパチャプス……!?
彼の顔とチュッパチャプスを交互に見て、また「え?」と声を上げてしまった。
な、なんなんだこのギャップは?
「えっと…これは…?」
「アイス落とさせたお詫び。なんかすげー悲しそうな顔してたから」
「悲しそうな顔……!?」
彼の言葉に顔に手を当てる。
私そんな悲しげな表情しちゃってた?
確かにせっかく増田さんからもらったものだからショックだったけど…
「えぇと、わざわざすみません…あ、ありがとうございます」
なんだかすごく親切な人…
見た目のクールさとはイメージが全然違う。
しかもポケットからチュッパチャプスって…
どう考えてもこんな金髪の怖そうな人からこんなチャーミングなアメが出てくるなんて想像できない。
私がチュッパチャプスをじっと見て固まっている間に、彼は何も言わずに道の奥に速足で歩いて行ってしまった。
「あ…っ」
無愛想なんだか優しいんだかわからない人だな…
真っ暗な路地にすぐに消えていった彼を見たあと、不思議な気分になったまま私も再び路地を歩き出した。
これが彼と最初に会った時の出来事。
驚いたことにその後も、彼と出くわすことになるとは、その時は私も思っていなかった……。


