再度忘れ物がないか確認してから、部屋を出てリビングに顔を出した。
キッチンで洗い物をしているお母さんに「行ってきます」と言った。
「あら、もう行くの? 忘れ物ないでしょうね」
「何回も確認したから、大丈夫だよ」
「ちょっとまって、お母さんが最終確認してあげる」
今洗っていた食器を置いて足早に私の元までやってきて、お母さんは頭のてっぺんからつま先まで厳しいチェックをしていく。
「…なんか私より、お母さんのほうが熱心な気がするんだよなぁ」
「ったり前じゃないのよ、あんなイケメンの横を歩くんだから、女にも華がないとね」
昨日、隼人くんと出かけることを告げると、お母さんは聞き終わるより早く勢いよく奥の物置部屋へ駆け込んで、数十分出てこなかった。
そしてやっと戻ってきたかと思えば、どこにそんな隠し持っていたと思うほど大量の服を両手に抱え、
「全部着てみなさい」
とそう言い放ったのだった。
私はもちろん冗談だと思った。(だってどう考えても40着以上はあったし)
自分の服でいいし、それにゆっこに頼もうと思ってたから断ろうとしたものの、「あんたの服はどれも無地で地味すぎるから却下」と。
私が出かける用事なんですけど…。


