恋するホイップ




「ってぇな…」


「!」


頭上から聞こえた声に、びくりと肩が震える。


お、男の人…!?

わかりやすい不機嫌さが滲む声に肩をすぼめながらそっと見上げると、

そこには金髪が目立つ学ラン姿の男の子が不機嫌そうに私を見下ろしていた。


金髪って…この人…ふ、不良?


「すすすみませんっ、よそ見してて…!」



バッと頭を下げると、地面に無残に潰れたアイスクリームが目につく。


ああ…せっかくの抹茶アイスがぁ…

でも周りを見てなかった私が悪いもんね。

もったいないけど仕方ない。

今からこの人にアイスを落としたケチつける勇気なんてないし…

だってこの人絶対ケンカしてる感じの人だもん。

さっきの声、私が中学生だったら失神してた。

強そうだし…デコピン1発でも頭蓋骨破壊されるかも。


考えてから「いやそれはないか」と頭を冷静にさせて深呼吸した。


しかし危機的状況には変わりない。

変な汗がたらりのこめかみをつたっていく。


せ、せめて殺されませんように…


ふるふる震えながら彼の次の一言を待つ。





「…いや、俺もよく見てなかったし。悪りぃ」


「……えっ」



しかし意外にも無愛想な低い声は、

少しだけ気遣うような色を帯びていて、私はびっくりして顔を上げた。