恋するホイップ



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その日。


私は、バイト終わりにサービスとして増田さんがくれた抹茶アイスクリームを食べながら、鼻歌交じりに路地を歩いていた。


こういうご褒美がある日は、路地を歩く怖さがちょっとだけやわらぐ。


抹茶アイスクリームがほんとに美味しいのだ。


甘さがくどくなくて、抹茶の苦味がいいアクセントになっていて食べていて飽きない。


甘党じゃなかったはずなのだけど、バイトを始めてから目につくのはスイーツばかりだ。


お客さんに出すスイーツを盛り付けながら、食べたい葛藤と常に戦わなくちゃいけないのが何気に1番大変かもしれない。


この時間にこんなカロリーを食べているだけでも、年頃の乙女にはタブーなのに

家に帰ってからもお腹が空いてお菓子食べている始末。


…少々お腹周りが気になるのだ。



続きそうもないダイエットのレシピを頭に描きながらぼーっと歩いていたため、

角を曲がるときによく回りが見えていなかった。


だからいきなり角から人が出てきた時には驚いて声をあげ、前につんのめりそうになった。


「ぅ、わっ!?」


ドンッと相手に額がぶつかって、その拍子に食べかけの抹茶アイスをべちゃりと地面に落っことした。