会釈しあった後、お互い何事もなく歩いていく。
…この妙なあいさつは
なにも今はじめて起こった偶然のことじゃない。
可笑しなことに、こんな不思議な日課みたいなことが、実は約2週間続いているのだ。
お互い目があうと、どちらからとも言わずなんとなく会釈をし合って、けれどそれ以外は全く接触することなく
彼は仲間の輪に戻るし、私は家路を急ぐだけ。
名前も知らない。年もわからない。
学ランだから学生なんだろうけど、どこの高校かもわからない。
そんな彼と不思議な「会釈関係」になったキッカケは
約3週間前の今日みたいなバイト帰りのことだった―――……。


