「じゃあ、好きなやつは?」
「え……っ」
隼人くんの瞳はまっすぐ私をみていた。
薄暗い路地に電灯の明かりしかなくて、表情はよくわからないけど
彼独特ののんびりしたような声音に、真剣さが混じっているように聞こえた。
「好きな人、は……」
心臓の音がどくどく聞こえる。
首回りが熱くなって、手に汗すら滲んでくる。
わたしの好きな人…
私は隼人くんを見つめた。
でも本人目の前に、「いる」なんて言葉にできなくて
口を開いては閉じてを繰り返す。
隼人くんはそんな私を見つめていたあとはっきりと言った。
「いても、いなくても、俺がもらうから」
「………!」


