「彼氏?」
「すみません!! うちのお母さんそういう話にすぐ首突っ込んできて…ふゆかいですよねっ、ちゃんと違うって言いますから!」
ぽかんとしたままの隼人くんに早口でまくしたてたあと、電話越しに笑っている母親に声をあげる。
「お母さん、もう勝手に変なこと言わないで。ほんとに最近話し始めた人なの。彼氏なんて軽々呼んじゃだめ! 隼人くんも否定してください! わが身の潔白のために!」
いろいろパニックになりながら隼人くんのほうに受話器を向ける。
「まあ、彼氏ではないけど…今は」
「ね? お母さん、聞いたでしょ。ほんとに違うから……って『今は』??」
振り返ってみて彼の言葉に違和感を覚える。
《やだあ、『今は』なんてもう付き合ってるも同然じゃないの。ちょっとその子に電話変わって》
「え、あの、ちょっと…」
言葉の意味を理解できずフリーズしている私から、ひょいとスマホを引きとって隼人くんはすまし顔で電話にでる。
「変わりました」
《もしもし? 麻由がお世話になってる彼氏さん?》
「だから彼氏じゃないって…」
だめだ、うちのお母さん、こうなると一人で勝手に解釈して勝手に解決する人間だからもう弁解しても聞く耳持たないだろうな…。
《麻由を家まで送ってくれるみたいだけど》
「そのつもりです」
以外にもしっかりと落ち着いた受け答えをする隼人くん。
その様子にお母さんも納得したのか、《よろしくね》とあっさり許可している。


