「じゃあ、明日終わったら待ってて」
「はい、お言葉に甘えて…」
まだ申し訳なさもあるけど、本当は来てくれることはとてもありがたい。
しばらくの間だけなら…。
「とにかく帰るぞ、さすがに長居しすぎた」
「はい」
そこで私はハッとしてスマホを確認する。
ひいぃっ
やっぱりお母さんから着信がすごいきてる…!
履歴のところにズラーーッと母、時々父の番号が並んでいる。
おそるおそる電話をかけると、ワンコール目でつながり、途端に耳にお母さんの怒鳴り声が飛び込んできた。
《あんた今どこ!!バイト終わっていつまでほっつき歩いてんの!?こんな遅くまで外で歩いて危ないでしょ!今お父さん迎えに行かせるから、場所言いな!》
「ご、ごめん!ちょっと立ち話してて、えっとここ…」
「送ってくからいいよ」
「えっ?」
《え??》
電話越しにも隼人くんの声が聞こえたのか、耳元でお母さんも声を上げる。
《麻由、あんた誰かと一緒にいるの?》
「うん、その…最近知り合った人と一緒」
《男の方…よね? …彼氏?》
「ち、違いますっ、何言ってるのお母さん!」
私はあわてて隼人くんをみる。
ちょうど聞いてなかったようで商店街をぼんやりみているだけだった。
「失礼なこと言わないでよ、そんなんじゃないんだから」
《こんな夜中に話し込んじゃって、あんたにしちゃ珍しいこともあるもんね。彼氏じゃないならどういう関係だっていうのよ》
「だから彼氏とか言わないでって……っ」
「あ」と気づいた時にはすでに遅く、ちらりと隼人くんのほうをみると彼はじっとこちらを見つめていた。
今の…今の会話は聞かれた……。


