「明日、何時に終わる?」
すっかり彼のペースに乗せられ、もう迎えに来てくれるのは決定されてしまったらしい。
髪を撫でながら、低い抑揚のない声が私に優しく問いかける。
…私、隼人くんの声すごく好きかも。
この声で何か告げられると、なんでも頷いてしまうそうになる催眠的効果があるように感じた。
「…今日と同じくらい、だと思います」
「明日も?」
「今新メニュー出たばっかりで忙しい時なんです」
「そういや、なんていうお茶屋だっけ」
「『めぐり』っていいまして、路地裏でひっそり経営してます。気づかれにくいんですけど」
「あー…。だから前会ったとき、あそこにいたのか?」
お互いが初めて会った時のことを思い出して、頷く。
「今度行く」
「え!」
「そこ制服とかあんの?」
「はい、一応和服で統一されてます」
「ふーん…。じゃあやっぱ近々行くことにする。麻由の和服着てるとこみたいし」
「そ、そうですか」
……やばい、和服ちゃんと着こなせてたっけかな、私。
毎回着てたはずなのに、今頃不安になってくる。


