「だから笑うなって」
「ふ、へへ…ご、ごめんなさ…」
「おい、言ってるそばから笑ってんじゃねーーよ」
彼は立ち上がって私の鼻をギュッとつまんだ。
「わ、わざとじゃなひんれす!」
「じゃあ素でやってんのか!それのがよっぽどタチ悪りぃぞ」
「えへへ…」
思いっきり怒られてるのに頰は緩むばっかりで終いには声を上げて笑ってしまう。
なんだかさっきまでのいろんな不安が、彼に会って話したら嘘みたいに消えちゃった。
「でも…今日はほんとに会えてよかった」
「は?」
ぽろっと出てしまったつぶやきは彼にばっちり聞こえてしまったらしい。
「い、いや、ちがっ…、ううん、違くないんですけど、今のはっ…」
ひぃ…油断しすぎてとんでもない失言をっっ
ああっ、いっそマンホールの中に飛び込みたい!!
隠れたい!!!
やり場のない羞恥心に真っ赤になった顔を隠しながら手をばたばたさせたりしてみる。
その様子をじぃっと見ていた彼は
やがてゆっくり俯いてため息交じりにつぶやく。
「………なんだ、その可愛さは」


