恋するホイップ




なんなの、ここって…



言いようのない恐怖がじわじわと体に広がっていく。


急に自分が立っている場所がどこか異世界のような、不気味な感覚がした。




ここって、こんなに気味の悪い場所だっけ?




「離してっ、行きたくないです!」


恐怖と混乱で頭はもうパニック状態だ。

声がかすれて大声も出せない。





引っ込んでいた涙が再び滲み出した


その時






「そこの。汚ねえ手、どけろよ」




突然すぐそばで声が聞こえたと思ったら、

次の瞬間には私は強く腕を引かれて誰かに抱き寄せられていた。


勢いよくその人の腕の中に飛び込むと、混乱する私を落ち着かせるように背中を軽くポンポンとたたいてくれる。

なぜか胸がじんわり熱くなった。




「なにお前? その子の知り合い?」


「あ、もしかしてこの子をフッた男とか。未練たらたらで戻ってきたんじゃね」


「それウケるーー」


男たちがバカにしたように言うのを相手にした様子もなく、

頭上で彼は鼻で笑い、低い声で唸った。



「フラれてんのはてめぇらなんだよ、馬鹿が。邪魔。さっさと消えろ」



そのあまりにも怒気を含んだ声に、男達も、守られている私までもびくりと震えた。


「…んだと、くそガキが…!」


「おい、やめろ。行こうぜ」


年下に言い負かされたのが納得いかないのか、1人が喧嘩腰になったのを片方が抑え

舌打ちを残して、そそくさとその場から立ち去った。



私は彼に抱きしめられたまま、頭の中は必死にフル回転していた。