恋するホイップ



それがちょっと意外。


特に意味もない挨拶なんだし、無視しても別に責めることはしないのに



…ただちょっと寂しくなるだけで。




あんまり自分から喋ってるところをみないから無愛想なタイプなのかなって最初は思ってたけど


路地でぶつかった時は怒ったりしなくて、チュッパチャプスまでくれたり

中華屋さんでの時はさりげなく男の子たちから守ってくれた…ようなことを考えると


あの人は、

本当はとても優しい人なんじゃないかなって、私は密かにそう思うのだ。




頭にふっと彼が笑ってる顔が浮かぶ。



あの中華屋さんで見たっきりの、端正な顔に滲むふわっとした笑み。



人を惹きつけるには十分なほど甘いマスクを被っているのに

さらにあの微笑みの破壊力だ。




もっと近くで、笑った顔が見てみたい。

切なくなるくらいにその願いが膨らんでしまう。




「………会いたい」



「恋する乙女は悩むわねえ」



机に突っ伏したままの私に、ゆっこの笑い混じりの慰めが降ってくる。




「まあ1週間も離れてりゃ当然。愛しの彼に会いたくもなるわ」


「愛し………」



改めてそんな表現をされると恥ずかしくなってくる。


恥ずかしいけど思いっきり否定できない。



「今日でテスト終わるし、久々にバイトあるんでしょ?
今日こそは声かける!あんたらの関係だと1週間のブランクはでかいからね」


「は、はい!」


凄むゆっこのにコクコク頷いたと同時に、昼休み終了のチャイムが鳴った。