恋するホイップ




こんな偶然にも会う機会が2回あって


すっかり顔を見知ってしまった私たちは、大通りで見かけるとなんとなく頭を下げて挨拶し合う仲になっていた…。

彼もどうやらこの繁華街にはよく来ていたみたいで、私がバイトの日は高確率で彼を見かける。


しばらくそんな挨拶が続くと、もう会釈することが当たり前みたいになって…


むしろ見かけなかった日は「どうしたんだろう?」なんて変に心配したりもするようになってるくらい。



彼がこの通りにいようがいまいが、あの人の自由なのに

それでもなんとなく私は彼の顔が見たくて無意識に姿を探してしまう。



といっても、結局あの2回以降私たちは言葉も交わしていないわけで。



元々全くの他人なわけだし、会釈し合ってるのがおかしいんだろうけど


いつまでこの関係が続くんだろうか。




本当は、あの人とまた話したい。



そう思って毎回声をかけようか迷ってるけど、結局勇気が出なくて2週間ずるずる過ぎてしまった。


こんな風に悩んでるのなんて

たぶん、私だけなんだろうけど。










―――




「まだそんな会釈なんてし合ってたの、あんたら…」




昼休み

教室で向かい合わせになりながら昼食をとっている相方の三好唯子(みよしゆいこ)が、呆れた顔で言った。


「だって声かけるって言ったって、なんて話したらいいかわかんないもん」


「なんだっていいんだよ、話題なんて。『いつもここに来てるんですか』とか『最近暑くなってきましたね』とかさぁ」


うーん、話したいのは山々だけど


やっぱりどれも今更感がある気がする。




この会釈だけの2週間はいろいろやりづらくさせちゃったような…