恋するホイップ



「じ、じゃあ私もう行きますからっ!」


私は足早にその場を立ち去ろうと店を出ると、後ろから「ちょっと待った」と呼び止められた。


「…なんですか」


赤くなった顔を見られたくなくて、ちょっとだけ後ろを振り返ると、彼はその様子にもちょっと笑いながら私の前に何かを差し出した。


「笑っちまったお詫びに」


「え…」


差し出されたものを見てつい彼の顔を二度見してしまう。


ま、またチュッパチャプスッ!?


なんなの、この人

いつもこれ持ち歩いてるの!?


今度の味はクリームソーダだ。



「ど、どうも…」

「ん。だからそんなムスッとした顔すんなよ」

「し、しちゃってましたか」

「してたな」



穴があったら入りたかった。


知らない人にふてくされた顔をしてしまうなんて子供かっ!


赤くなった頰を両手でぐにぐに抑えると、また笑い声が聞こえてきた。


「へんな顔」


「へん!?」


これにはさすがに言い返してやろうと顔を上げたけど、本当に面白そうに笑ってる彼の顔を見て咄嗟に言葉に詰まった。


きゅっと胸がしまる感覚がして、急に心臓の鼓動が早くなる。



街中のネオンの光のせいなのか、それとも私の目だけがおかしくなったのか

妙に彼の笑った顔がキラキラして見えてしまう。


な、なんだろう、これ…?



「えと…じ、じゃあ私はこれで!」


胸の高鳴りが落ち着かなくなって、私は今度こそ逃げるようにその場から走り去った。