彼が言うと、ブツブツ言いながら男の子たちは店の奥に入っていった。
あの集団の中でも、この人は静かな方の人なのかな。
あんまり騒いだりするようなタイプには見えない。
こっそり彼を観察しながら、脳内で2人きりになってしまったこの場をどうするか考える。
な、何か喋んなきゃ。
でもこれといって話題もないし…!
「…あのぅ、先日はほんとにご迷惑おかけしました」
とりあえずこの前のことをもう一度謝っておこう。
「別に、気にしてないから」
頭を下げると、頭上からは相変わらず無愛想な低音ボイスが降ってくる。
でもこの間よりは少し声音が柔らかい気がしたのは気のせいかな…。
改めてしっかり彼の顔を見ると、本当にモデルみたいに整った顔してる。
つり目がちな瞳に長い眉毛
癖っ毛っぽい金髪は染めてると思うけど、凄く綺麗に馴染んでいる。
あの時は暗くて気づかなかったけど、耳にはブルーの小さなピアスをしていた。
やっぱり不良さん?
でも、なんとなく彼からは前より怖さを感じなかった。
あの時は場所も路地裏だったから余計怖く感じてただけだったのかなぁ。
「その肉まん…」
不意に彼が私の手に持っていたビニール袋を指差す。
「あ、ここの肉まん美味しいですよね。いろんな味があって」
「美味いけど…」
彼はなぜか私と肉まんを感心したように交互に見た。
「あんた1人でそんなに食うんだな…」
「えっ」


