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誰かの足音が聞こえた気がした。
後ろを振り返ってみても、あるのは自分が今通ってきたばかりの、一直線にのびる暗い路地だけ。
人っ子ひとり見当たらない。気配もない。
気のせいだったのだろう。
少女は再び歩き始めた。
ローファーのカッカッという軽い音が狭い路地に響く。
ほおを撫ぜる風は冷たかった。空気が乾いていた。
この道は、電灯が立つ最初の角まで数十メートル、一切曲がり角や脇道などがない。
空き家や低いビルの塀で道が覆われ、密閉されているようでどことなく息苦しさがあった。
少女はひたすら路地を進む。
今日は、なるべく早くこの道を通り過ぎてしまいたかった。
普段より遅い時間だったからということもあるけれど、それよりも、この場の雰囲気がいつもより妙なのだ。
なにかが変だ。
いつもなら聞こえる近くの国道を走る車の音も、大通りの人の声も、風の吹く音すら聞こえない。
無音。
と、ふいに、ヒタリ、と。
少女の足音を辿るようにして、別の音が混ざっていた。


