と、止まる寸前
右手をぐっと掴まれて引っ張られた。
顔を上げると、いつの間にか先を越して目の前にいた隼人くんが、いつもの無表情な顔で…だけど少しだけ優しさが滲んだ瞳を向けていた。
「なにぼーっとしてんの、はぐれるぞ」
「隼人くん…」
自然に握られた手にドキドキする前に
私に気を遣ってくれたことが申し訳なくて、でも嬉しくて
なんだかぐっとくるものがあった。
「うん、ありがとう」
あぁ、こういうところが好きなんだよ。
なんでこの人はいつもタイミングがいいんだろう。
私の心までわかってるみたい。
私の勝手な解釈だってわかってるけど、でも
そういうところに惹かれる。
「映画って何時だっけ。こっちから出かける予定持ちかけといて、時間は麻由に任せてたな」
独り言のようにつぶやいている隼人くんを見上げ、それから繋がれたお互いの手を見て。
私は知らず頬が緩んだ。
「まだ時間には余裕あるよ。少しゆっくり歩かない?」
もう少しこうして歩いていたい。
私の提案に隼人くんは不思議そうにこちらを見下ろした。
「…わかった、そうするか」
すると何を思ったのか、隼人くんは一度私の手を離した。
私が離されたことに寂しさを覚えるより早く、再び握り返される…というより、お互いの指を絡ませてよりしっかり握り返した。


