私が頷き、彼が腕の力を抜くと、ふたりの間を心地よい風が吹き抜けた。





「なぁ、夏仍……」




聞こえたかも分からないぐらい小さな声は、透き通った空の青に溶けていく。




彼の髪が、ふわふわと優しく揺れる。




彼は私の涙を、そっと親指で拭う。それでも涙は、溢れてくる。






ねぇ。気づいていますか。



きみの見ている世界が目の前にあって───きみの声が、聞こえること。




君がいるだけで、こんなにも嬉しくて泣きそうになること。世界が、もっと明るく見えること。






───……神さま、私は、幸せです。





彼は、私の潤んだ瞳の奥に映る、抜けるような青空を見つめた。