「……泣いてどーすんだよ、バカ」
優しく撫でられて、さらに涙が溢れた。私は、いつだって、バカだ。
グラウンドの方から、「カコーン」と、ボールの打ち上げられる音が聞こえてきた。
続いて聞こえるのは、歓声。桜の咲く枝を、風と共に揺らす。
「約束は、守るに決まってるだろ。
…………"幼馴染み"だったんだぜ?俺は絶対に、お前のことを忘れねぇ。だから……」
そう言って一旦切ると、彼はぎゅっと力強く、私を抱き締める。
「夏仍も、守れよ───?」
あの日見た夢の中では、好きで好きで、ずっと諦められなかった。
けどあの夢は、私たちを──まだ、この世界で繋ぎ止めてくれた。