目頭が熱くなって、鼻の奥が痺れたように痛くなった。
次の瞬間、瞬きとともに、二粒の涙が目から弾き出された。
「そう、……だったんだね」
その腕の中は温かく、どこか懐かしい。風に揺れた彼の髪が、そっと頬を撫でた。
「全部、私が…………大切なことも、忘れちゃったのに……っ」
全て思い出した。
私がずっと、誰を追いかけて、誰を想っていたのか。何を忘れたくなくて、
───何を忘れてしまったのか。
「ずっと、私のこと……覚えてて。約束……守ってくれたんだね」
でも、私に記憶がなくても、全て、彼が覚えていてくれたんだ。



