フルートを箱に戻して駆け寄ってみる。が、何をしていいか分からない。 「ど、どうしよ……こんなに汗かいて……一体どうし───」 パニックになって声をあげる私。 あたふたして、とりあえず彼の汗を拭こうとハンカチを出した、その時。 「……夏仍、なんだな」 しゃがんだ私に、彼は抱きつくようにして、私の背中に手をまわしたのだ。 「え……?」 どうして知ってるの? 驚いて目を見開いていると、……あの日、手紙に書かれていた内容が、脳裏をよぎった。 ───