話を聞き終わると、私は本をしまって、机の上の片付けを始める。
とってのついた、黒い箱のようなものを左手に持ち、私が教室を出ようとすると。
「行くのか?」と、宿題をまだ写している佐藤くんが、顔をあげた。
「うん。まあ……練習しなきゃ、上手くなれないし。もうすぐコンクールだから」
「……吹奏楽部も大変だな」
「えへへ……まあね」
そう言ってドアを閉めると、私は廊下を歩いて、西の階段の方に向かった。
段を上がっていく度に聞こえる、野球部のボールを打つ音や、陸上部の掛け声。
最後の段までのぼりきると、私は風で押されて重くなった扉を、押した。
屋上には誰もいない。風がビュオンと耳元で唸り、スカートが揺れる。



