時刻はどれぐらいだろう。 まだ朝日は昇らない。きっと、午前零時も過ぎていない。 黒く濁った壁を抜けた先に広がる、世界。 その世界が目に映った瞬間、やっと試練を乗り越えてここまできたのだと、悟った。 月明かりを受けて薄明かるく光る桜の花びらが、数枚。ひらひらと舞い落ちる。 まるで、雪が降っているようだった。 少年が一歩前に出て、ゆっくりと落ちる花びらを、一枚。優しく手ですくった。 「全部……終わったんだな」