今から轍から取り上げる? いや、きっと……それしかない。 私が意を決して足を前に出す。と、その時だった。 悠真が「ふっ」と鼻で笑って、口角をあげた。そして、何をするのかと思いきや。 「……残念だが、それは間違いだ」 そう言い張った。 間違い?でもあの時、悠真の手から確実に轍に渡したはず…… 「は?」と、轍が睨む。悠真は額に汗を滲ませながら、答えた。 「お前が持ってるのは───俺が事前に用意していた偽物だよ」 それだけ言うと、悠真は私の手を引き、向きを変えて走り出した。