時間があるのに。そう言い終わる前に、汐見さんが言った。
───「行って!手遅れになる前に、早く」
私達を遠ざけるように、言い放った。
その瞬間、窓も開いていないのに風が吹き、汐見さんの体が淡い光に包まれる。
ブワッ、と光を浴びた風が、目を開けていられないほど、吹く。
そして、聞き覚えのある音が、風の音に混ざるかのように、鳴り出した。
ピピ、ピピ、ピピ────
「く、そッ!てめぇ……何しやがるッ!!」
轍が目を見開いて、怒声をあげた。
汐見さんの体が白く光り、風が吹き荒れる。ここにいたら駄目だ、直感がそう言っていた。



