「汐見…………優美ッ……!」
汐見さんは轍にしがみついて、離れなかった。轍の動きは封じられ、黒い霧も消えていく。
「……汐見っ!」
悠真が叫ぶと、汐見さんの声が、直接私たちの心のなかに聞こえてきた。
───「悠真くん、夏仍ちゃん。巻き込んじゃって……本当に、ごめんね」
「そんな……こと」
悠真が唇を噛み締める。
最初から分かっていたみたいに、汐見さんは苦笑いを浮かべていた。
───「ゲームを終わらせて。私はもう、そろそろ終わりにするから」
"終わり"、という言葉が、何度も頭の中でエコーした。それは、汐見さんの最期を、意味しているようで。
「待ってよ。まだ、時間が……」



