また一つ、小さな涙が溢れた──その時。
サァッと隣で黒髪が揺れて、いつの間にか私の前に、一人の少女が立っていた。
揺れる長い睫毛。柔らかい薄桃色の唇。
一瞬、時が止まったように感じた。
「……仲間かぁ」
体を包み込むような温かい声。長い睫毛のついた瞼をあげると、汐見優美は、そう呟いた。
「最後ぐらいは、私も名前で呼ばれたかったなぁ……みんなに」
「……邪魔を……するなアァッ……!!」
轍が目の前の汐見さんに飛びかかる。
が、汐見さんは轍の動きを見切っていたのか、そのまま抱き締めるような体勢で、轍の背中に手を回したのだ。



