轍は起き上がって、私に目を向けた。
「見ぃつけたァッ……!!」
そしてそのまま、私めがけて飛びかかってきた。もう、逃げる余裕なんてなかった。
「夏仍、立て!早く逃げろッ!!」
悠真の声が、耳から耳に抜けていく。
私はバカだ。最後の最後まで、本当に、誰の気持ちも理解してあげられなかった。
ねぇ、轍。
私のこと、ウザい奴だ、って思ってたのかな。
どこまでも自分の邪魔をしてくる最低な奴だって思ったかな。
それでも、いいと思う。轍といられた時間を、私は許すよ。憎んだりしない。
轍は、──大切な仲間なんだから。



