「轍……もう、やめてよ!」
涙がボロボロと溢れる。
もう、これ以上……こんな事はしてほしくない。誰にも……手を汚してほしくない。
最後の方は金切り声になりながらも、私は必死に声に出した。
「もう、やめて……っ」
辛い。もっと辛い──。
ずっと死んでしまった人達の思いを抱えて生きてきた轍の方が、辛い。私よりも、ずっと。
形にしようとしなくたっていい。何も残らなくたっていい。
殺された人の気持ちなんか、私には分からないけど。……でも。
「轍は轍だよ!!他の誰でもない……っ。だから、ちゃんと自分の言葉にして伝えなきゃ……私には分かんないよ!」
だからこそ、分かってあげたいと思った。



