轍が助走もなしで飛びかかってくる。数メートルの、超跳躍。
私に向かって跳んできているというのに、動くことができない。涙の滲んだ目を、これでもかというほど強く塞ぐ。
「がぁっ!!」
ドンッという衝撃音と供に、呻き声が耳に流し込まれた。
運良く悠真の拳が轍にぶつかった。バランスを崩した轍は、私の隣の壁に体を強く打ち付け、落下。
辺りを漂う黒い霧から、微かに声のようなものが聞こえてきた。
『死にたくない』『辛い、苦しい』。泣き叫ぶ声さえも、黒の感情に変わっていた。
死んだ生徒達の復讐心に埋もれ、轍は黒い息を吐く。瞳の奥には剥き出しの憎悪。
もう、どうすることもできない。
耐えられなくなって、叫んだ。



