「夏仍!?」 悠真が驚いて、反射的に振り返る。 轍が瓦礫を這うように登り、私の前の廊下に足をつける。 あまりの恐怖に、体が言うことをきかない。腰を落としてしまい、逃げることができなかった。 「……い、や…………っ」 息が苦しい。心臓が破裂しそうだ。 悠真が怒声に似た声で叫んだ。 「轍!?クソッ……まだ生きてたのか!!」 前の轍とは明らかに違った。 数歩たたらを踏み、黒い霧を口から大量に吐いていた。 「あ、……あ……ぁ…………返せ…………命を……声を…………返せ……えぇ…………ッ!!」