私も後についていこうと、顔をあげて振り返ろうとした、その時。
瓦礫の山の上に、いつの間にか血塗れの腕が乗っていることに気付いて、足を止めた。
上から降ってきたものなのだろうか。しかし、傷はなく、形は綺麗だった。
何だろう……何かが、変?
その手をじっと見つめる。でも、何も起こらない。ピクリと動きもしない。
……気のせいだったのか、と私が息を吐き出して、瞼を下ろす。
もう一度視界が開いた、その時───
「きゃああああああっ!!!」
一度目に焼き付いたら離れないような、酷く口を吊り上げた笑みが映って。
瓦礫の形に顔をあわせて、横に頭を倒した轍の姿が、はっきりと見えたのだ。



