「どうした。気が狂ったか!」
轍が先生達の隙間から、顔を覗かせる。
ヒュオン、と耳元で風が鳴る。黒い霧を掻き分けて、悠真は右に曲がった。
階段に足をかけると、私がついて来れるように、速度を遅めて下りていく。
でも、このままじゃいずれ、先生も轍も追ってくる。それなのに、どうして……悠真は。
「夏仍、俺が合図したら耳を塞げ」
「え?あ、うんっ」
悠真が二階に着いて、止まった。
まったくその言葉の意図がわからず、私は困惑していた。それどころか、悠真は逃げようとはしない。
悠真はいつの間にか手を離して、隣ではなく、私の前に立っていた。
不安になって、訊く。
「悠真……お、下りないの?」



