そして、黒い霧のようなものが背後から漂ってきた。
冷たい空気。塞がらない口。そして体を突き抜けるような、とてつもない恐怖。
悠真に手を引かれて何とか立ち上がると、轍の頭ががくんと下を向いた。
ぴたり、と時間が止まった気がしたのは気のせいだったのだろうか。
私が少しだけ息を吐いた、刹那。
轍が弾かれるようにして顔をあげ、私達をからかうような笑みを浮かべる──
地面を蹴って赤の水面(みなも)の上を走り、一瞬にして私達の前に躍り出る。
「まだまだァッ!!このゲームは終わらせない──ッ!!」
目眩がするほどの奇声をあげて、轍が拳を振り上げた。



