悠真の視線の先に目を向けてみる。
そこにいる轍の様子がおかしいことに、私もすぐ気づいた。
面白おかしそうに頭を肩にのせ、真っ黒な瞳で、瞬きをせずにこちらを見ている。
大きな三日月のような口は、歪んだ笑みを浮かべていた。
悠真が恐怖で拳を震わせながらも、真剣な目付きで言った。
「轍の本気は、こんなもんじゃねぇ……」
ズルッ、と悠真が足を一歩後ろに下げた。
──その瞬間。
轍の足元の赤い液体が揺れる。小さな波を打ち、それは同心円上に広がっていく。
徐々に大きくなる波。雨のように足に打ち付ける生温いしぶきが気持ち悪い。



