耳元でも聞こえづらいのは、仕方がなかった。鼻をすすって、涙を飲んで、嗚咽を殺しながら、柚希が笑った。
「……それでっ、何十年経って、夏仍たちがまた逢いに来てくれるまで、待ってるね……」
するすると、背中に回された手が離れていく。私も、何度も目を擦った。
「柚希……」
「私はひとりじゃないから大丈夫!皆を救って、自分の気持ちを素直に伝えてね」
無理に笑ったせいで、柚希の笑顔はひきつっていた。それでも、柚希は笑う。
「柚希っ……」
柚希が扉の奥に入る。
見えない透明な壁のようなものが、私たちの前の境界線。もう、柚希には触れられない。
「最後に会えて、本当に嬉しかった」



