「柚希……」
柚希がまた、私の前を通った。
今度は顔を見せないように、すっと目の前を通りすぎる。
柚希の声が、とても小さく聞こえた。目の前の肩が、小刻みに震えている。
耐えられなくなったのか、柚希は振り返ってそのまま私に抱きついた。
結ばれたポニーテールが、風のない空間でさらさらと揺れる。
「それと…………最後なのに、上手に笑ってあげられなくて、ごめん……っ」
「そんなこと、ない……」
「あっちの……世界に行って、もし山橋がいたら……っ、返事、返してくる」
誰よりも辛かったのは、私じゃなくて柚希だった。一人になる苦しみに、ずっと不安を抱えていたんだ。



