ドアを十五センチぐらい開けて、悠真が小声で聞いてきた。
「大丈夫?ここから先、結構酷いけど」
「うん……でも、だいぶ馴れたから」
赤。血の海と化した、廊下。
大丈夫とは言ったものの、悠真に手を引かれないと、動けなかった。
血の臭いが漂泊する。月の光なんてない。真っ暗で真っ赤で、何も見えない闇。
唯一、非常口を指す緑のプレートと、火事が起きた時に押す赤いボタンが光っているぐらいだ。
ぐちゃ、ぐちゃ。
地面に沈んでいくような、のめり込んでいくような、何かを踏み潰しているような感覚。
これが誰かの体の一部だと思えば、吐き気がする。



