嫌だ。苦しい……痛い。
どく、どくと心臓が激しく脈を打つ。顔が熱くなる。スカートをかたく握った手が震え出す。
悠真が開いた筆箱のなかで、キラリと金属製のものが光った。
それが目に入った、瞬間────。
引ったくるようにしてそれを取ると、私は自分の左腕目掛けて、突き刺す。
「……っ!」
その途端、頭の痛みは消え、目眩がなくなる。体まで軽くなった気がする。
「夏仍ッ!?何やってんだよぉっ!!」
悠真が怒りを露にして、怒声をあげた。
皆が顔を真っ青にして私を見ている。力のこもっていた右手を離してみると、左手が地面の方に向いて、だらんと垂れた。



