「ちょっと!颯斗!静かにしなさい……皆が見てるのよっ……」
「う……うぅ……っ」
お母さんと、お父さん。
高校一年の兄は制服姿で。親は二人とも、スーツのような黒の服を着ている。
「……なぁ、優美。聞いてるか?……俺、お前が卒業して、高校一緒になれるって……ずっと楽しみにしてたんだぞ。なのに、なんでお前が急にいなくなるんだよ……!」
いなくなってなんかない。
私はここにいる。なのに、お兄ちゃん。どうして気づかないの?
何か大切なことを忘れている気がして、胸の奥が少しだけ痛んだ。
私、一体何を忘れてるのかな?
「お兄ちゃん?私、ここにいるよ?」
呼び掛けても、振り向いてはくれない。



